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カルロス・ゴーンは日本に戻ってくるの??~ゴーン逃亡から考える国際法「犯罪人引渡し」~

こんにちわ!古橋です。

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Wikipediaより

今日のテレビはどこもかしこもゴーン一色ですね!

そこでみなさんも疑問に思ったのは、「なんでレバノンはゴーンを返さないの?」「ゴーンは日本に戻ってくるの?」だと思います。

今回はゴーンが日本に戻ってくる可能性を国際法から簡単に見ていきましょう!

 

まず、二国間(日本・レバノン)の引渡しを考える上で二つの犯罪の種類があります。

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一つ目は普通犯罪です。

その名の通り、殺人であったり、強盗であったり、普通の犯罪のことです。

 

もう一つは政治犯です。

これは絶対的政治犯と相対的政治犯に分類されます。

簡単にいうと、

絶対的政治犯→革命やクーデターを計画するといった純粋に政治秩序を侵害して国外に逃げたもの

通説では引渡しは行われない

(参考 尹秀吉(ユンスンギュル)事件:朝鮮より不法入国した尹が、日本で反韓運動し、強制帰国させるか争わせた事件。1969年地方裁で引き渡すべきではないとされたが、高裁で引渡しとなり1976年最高裁判決で上告棄却された。しかし、現在では1審判決が支持されているのが多数説である。)

 

相対的政治犯→絶対的政治犯と同様に政治的なものであるが、その過程で殺人や強盗などもしてから、国外逃亡した場合

通説では引渡しはグレーゾーン(法律によってそれぞれ見解が分かれる)

 

今回のゴーンは金融商品取引法違反なので普通犯罪ですね。

 

次に日本とレバノンで犯罪人引渡し条約が締結されいるのかですが、残念ながら日本が締結しているのはアメリカと韓国のみです。

※ちなみに2012年現在で米は69、英は115か国と締結。欧州では多国間条約(欧州犯罪人引渡し条約)も存在。

 

それでも以下の条件が揃っていれば引渡しがおこなれる場合があります。

1. 重罪であること

2. 罪に対して両国の刑法上の犯罪者である(双方可罰性)

3. 被請求国(レバノン)の国民でないこと

 

1に関してはゴーンは殺人等は犯していませんが、してきたことを見ると軽い罪とは言い難いので満たしていると考えます。

2に関してはレバノンの法律まではわからないので保留としますが、日本の金融商品取引法を違反すると刑罰が与えられことがあるので満たしていると言えます。

 

最大の問題は3についてで、ゴーンはレバノンです。

慣習法(明文化されていないが根付いているので法として扱われるもの)では、自国民は引き渡さないことされています(例外:米・英)

 

よって国際法の観点からはゴーンが引き渡される可能性は低いと言えます。

 

ただこれはあくまでも国際法の視点であり、実際には政治的判断で引き渡す可能性は十分にあります。要はレバノンが日本との関係を重んじるか、それともゴーンから得られる利益のほうが大きいか天秤にかけた結果がでることでしょう。

 

 

今日の内容をまとめると、

「ゴーンは国際法の犯罪人引渡しで考えると、普通犯罪が適用され、レバノンは自国民を守る可能性が高いため、引き渡される可能性は低い」となります。

 

最後までご観覧いただきありがとうございます!

 

 

 

 

参考文献・写真引用

松井他著「国際法」、中谷他著「国際法

http://www.ipo-navi.com/closeup/disclosure/violation/